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映画館の無い街でおたくが七転八倒

『X エックス』どんでん返しじゃないけどネタバレ厳禁!

【下書きに塩漬けされていたので供養】

 

A24期待のホラー新作『X エックス』見ました。

『ソー ラブ&サンダー』も初日で押すな押すなの大盛況でしたが、こちらは閑散としてて寂しかったです。

 

A24のおしゃれ方向はピンと来ぬままだけど、ホラーはとても好きだ。

『アンダー・ザ・スキン』『Mr.タスク』『イット・カムズ・アット・ナイト』…

今後も飛んでるヤツを期待してます。

 

さて結論、非常に楽しんで見ました。

重大なネタバレを避けずには語れない作品なので、ネタバレ警察の方は見ないようにお願いします。

 

雑なあらすじ

映画撮影しに田舎に行った若者が、婆さん爺さんに惨殺されます。

 

感想

わたくし人生で一番好きな映画は『悪魔のいけにえ』なので、今作も嫌いなはずがありません。

隆盛を極める老人ホラーシーンですが、今作は“老人の性欲”にど正面から切り込んでおり意欲的でした。

エイジズムとフェミニズム評論の目から見れば、非常に実り多い作品です。

 

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全部割と好き

 

中盤、一見中だるみっぽい飲み会シーンがあります。

ここ痛烈に映画内映画批判を繰り広げるハイコンテクストな会話なのですが、同時に純潔(従来ならファイナルガールになっているはずのロレイン)が規定から逸脱していく重要なシーンでもあります。

それが、無いものと黙殺されていた“老人の性欲”の解放に繋がっていく暗示なのです。

この映画の女性たちは全て規定された役割を破壊していき、痛快です。

 

独特のカメラワーク

ファーストカット

この映画アカデミー比(4:3)なの?と思わせるようなファーストカット。

と見せかけて、左右のブラックマスクは小屋の壁でした。

ゆっくりと小屋の外へズームインしていくにつれて、画面はオープンショットになっていきます。

主人公たちが撮影する8mm?16mm?の自主映画とリンクしたオープニングであることに後々気づかされます。

引用元があるのかも。

 

シーンの切り替わり

短いインターカットが繰り返され、気づくとシーンが切り替わっています。

全体的に不穏なムードが漂いまくっているのはこの演出の効果がデカいはず。

 

弾き語りと三面鏡

先述した飲み会シーン。

弾き語りを楽しむ若者たちの光景が急にスプリットスクリーンになり、三面鏡を見つめるパールの恨めしそうな姿がカットインします。

スプリットスクリーンは三面鏡でさらに分断され、カットバックを繰り返し、左右が入れ替わり、コンフュージョンしながら2つの光景は溶け合っていくのです。

シーンの切り替わりと同じですね。

性欲の解放、と感じたのはまさにこのカメラワークが理由です。

 

ミア・ゴスまさかの…

ミア・ゴスの一人二役、衝撃的でしたよね!?

これ級のうれしい驚き。

 

パールがマキシーンに無性に惹かれていた理由にあまり納得いってなかったのですが、まさかクレジットで回収してくれるとは。

映画内の時空がゆがんで、抜け出せない円環に囚われてしまったかと思いました。

「私だって昔はこうだったのに」の言霊の重みが段違いです。

まさかの続編『Pearl』制作決定にも笑ってしまいました。

このフットワークの軽さがジャンル映画然としていて好感持てます。